山崎統和の場合。



 何もわかってなかった。
 なにひとつ理解してなかった。
 恥ずかしくて、いても立ってもいられなくて
 どこか遠くへ、誰も俺を知らない所へ行きたかった。
 そうすればどうにかなるような気がして…。
 思えばずっと、こんな逃げ道を探していたのかもしれない。


 アイツ。
 あの小さい奴。
 はっきり云って、めちゃくちゃムカついた。
 度量セマイかもしんない、でもその時の俺は切羽詰ってた。
 アイツが小汚い悪魔にしか見えなかった。
 本気でツブそうと思ってた。それでも、メゲないのが余計にムカついた。
 そのうち、周りが見えなくなってきて。
 歯止めって何? そんな感じ。


「へえ。ヤツ当たりなんかできるようになったんだ」
 うるさい、うるさい、うるさい、うるさい…!!

 もういいから放っといてくれよ!

 ――ううん、誰でもいいから話を聞いて…

 どっちなんだよ? 


 自分で自分が、よく解らない。


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