復讐は俺に任せろ



「あ、松下だ」

 云った瞬間、思いっ切りよく背後から頭を叩かれた。スパコンッて。まだ買ってもない雑誌でそんな音させんのって反則くない…? つーかオレの頭をこうも思い切りよく叩けるのは身内を除けばこのオトコ一人しかいない。
「痛いじゃねーかよ…」
「知るか」
 俺を叩いたぴあがバサッとカゴの中に放り込まれる。つられて視線を落とすとさっき俺の入れた牛乳プリンの姿がドコにも見当たらなくて。ウーワ、返しやがったなコイツ…。

「俺の牛乳プリンは?」
「欲しけりゃ自分の金で買え」
「…ちぇっ」

午前3時、バイト上がり。最近はこうして夜食を買ってから、帰途につくのがいつのまにかセオリーみたいになってた。俺と松下のメンテが重なる火曜と木曜と日曜は必ず。

「あ、あそこにも松下が」
「……オマエな、そのパンダイコール俺って図式イーカゲンやめろ」
「なんで? だって松下じゃん?」
「それはオマエが勝手に命名したんだろ」
「じゃー、チワワ見たら俺って思ってもいいよ」
「チワワに失礼だろ」

 ……オマエのが千倍失礼だわい。

 アッタマきたから松下がよそ見してた隙に「あ、アレ松下の欲しがってた靴じゃね?」と、俺はぴあとカゴの隙間にパンダのがま口を一つ滑り込ませてやった。俺の指差した方角、どっかの現場のオッサンの足元を見て「……俺がいつ安全靴なんか欲しいって云ったよ」と、呆れたような溜め息を一つ零して松下がレジへと向き直る。へへーんだ。時すでに遅し! がま口はもうビニール袋の中なのである。店員さん、ナイス手際!

 かくして俺の復讐は成功に終わった。

「テメエ、ふざけんな」
 店を出るなり発覚した俺の悪事に松下が怒りに震えたのは云うまでもない。つーか、俺のこのカワイイ顔にアイアンクローとは思い切ったコトするじゃねーかよ、コノヤロウ…。まぁ、そんなこんなあって。

 俺のカバンにはいまもチョコンと松下が入っている。


end

リヴリーを知らないヒトには何がなんだか解らない話ですね…。二人はお互いの名前をつけたリヴリーをそれぞれ飼ってるらしいです。で、松下の方がパンダにクリソツだという話。しかしコンビニには松下がたくさんいます。パンダって何気によく使われるモチーフなんでしょうか? ちなみにこのがま口松下は税込み504円です。松下のクセに高価な…!(失言) タイトルは古い映画名から拝借。確かこんなタイトルだったはず……。

(040530 / 旧雑記帳より)


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